今日は、僕が勤務を開始した日から連泊していたドイツ人女性の最後の宿泊日です。

ずっと同じ屋根の下で寝泊まりしていて、暇なときに話し相手になってもらったり、毎日必ずゆんたくに出てきてくれるから心強かったり、気づけば無くてはならない存在になっていたので、彼女がいなくなることがとても寂しく感じていました。

毎日色々とある中で少しずつ削られる部分があって、この方に支えられてる感は大きかったので、そういう意味でも彼女が去ってしまうと考えると結構寂しさが募ります。

たくさんの話をして、日本とドイツの文化の違いについて教え合ったり、前日のゆんたくで出た話題を掘り下げたり、彼女自身のこれまでとこれからを聞いたりと、僕的にはとても仲良くなっていた気がしてました。

でも僕はスタッフで彼女はお客様であり、例えば連絡先を交換したりをこちらから言うのはマナー違反の気がするし、もしご迷惑に感じられたら迷惑なスタッフ認定で宿に迷惑をかけてしまうからうかつなことはできない…でもこのまま一期一会でこの方に会えなくなるのは寂しいことだなあとか悶々と考えながら業務を開始して、ひとしきり終えた後、庭でいつもの待機状態に入りました。

しばらくは出発する方のサポートやお見送りなどをして、すべてが一段落した午後、彼女が食事をしに庭に出てきました。

食事の邪魔をしないように、そして僕が話したいからとむやみに話しかけるのも悪いと思い、挨拶だけしてずっとスマホをいじっていたら、彼女が

「インスタありますよね?」

「3つありますよね?」

と突然話しかけてきました。あ、ちなみに彼女は日本語ペラッペラです。

インスタのアカウントが3つあるというのは数日前に他のお客様とした会話で、そのときにそのお客様たちとはインスタのアカウントを交換したのですが彼女はそのときに特に話に入ってはこなかったので、インスタはやってないものだと思っていました。

僕が「はいありますよ」と答えたら彼女は「教えて下さい、3つとも」と言いました。

彼女がそのことを実はちゃんと聞いてて興味をもって憶えてくれていたこととか、彼女の方からインスタのアカウントを聞いてくれたこととか、とても嬉しくてちょっとぐっと来てしまい、その後彼女が

「あなたがいてくれたおかげでこの宿の滞在がとてもよいものになった。いなかったらもっと違ったものになったと思う。ありがとう。」

という意味合いのことを言ってくれて、僕はそこで涙腺が決壊して、彼女の前でぽろぽろと泣いてしまいました。

一人旅の外国人の方は自分の時間を有意義に過ごすことに重きを置くことが多くて、彼女もそうではないかという思い込みから僕はずっと僕が話しかけているのは迷惑ではないかと考えていたし、なにかと構う僕を実は疎ましく思っているのではないかとも思っていました。

お客さんが声をかけやすいようにと僕が常に庭の共有スペースに常駐していたのも、彼女にとっては庭でゆっくり過ごしたいという思いを邪魔するものではないかという思いはずっとありました。だからそれを伝えて、そう言ってくれて嬉しいと彼女に伝えると、彼女は

「そんなことはない。私も話したいから出てきてます。話したくなかったらたぶんドミトリーから出てこないです。」

と言ってくれて、僕はもう涙が止まらなくて困りました。

そのあとずっと彼女はそこにいてくれて、何時間も、とてもたくさんのことを話しました。彼女にとってもたぶんこうしてゆっくり話せるのが最後だし、僕との会話はきっと楽しいもので、最後にゆっくり話すためにそこにいてくれたのではないかと思うととてもありがたくて幸せです。

色々とあってもう帰りたいとか思った瞬間もあったけれど、でもこの出会いだけで僕がここに来た意味はあり、彼女との出会いはとても大切なものになりました。

彼女が滞在している間に他の方の写真は撮っていて、彼女にも撮らせてくれないかと声をかけたことはあったんだけどそのときにはあまり好きではないからと断られていました。

今日たくさんの話をして、改めてあなたの写真を撮りたいんだけどと言ってみたら、今度はOKが出ました。なんかそれも、信用していただけたみたいで嬉しい。

夕方のいつもの夕陽の時間に撮ることにしていたらこの日はあいにく天気が悪く夕陽ツアーは中止。ドイツ人女性の写真を撮ることはかないませんでした。

仕方がないので諦めて、昨日から泊まりに来てくれている友人と、この日チェックインの女性との3人で食事に出たのですがどこも満員で、宿に戻るとドイツ人女性が宿で販売しているカップ麺を食べようとしていたので、僕らも一緒にカップ麺を食べることに。

食べ終わってみんなでくつろいでいて、夕陽ツアーがなくて写真を撮ることができなくてとても残念なのでこの庭で撮ってもいいかと聞くとOKが出たので、みんなで話しながら少しだけ撮影をさせていただきました。

その後話していたら、本日チェックインの女性が明日黒島に行くかどうかを迷っているとのことだったので、僕が黒島で撮ってきた写真や映像を見せるからそれで決めたらどうかというお話になり、この日の宿泊者がこの4人だけだったこともあって、今日のゆんたくは僕が取りためた素材の上映会をすることになりました。

ゆんたくは本当にその日その日で趣が異なり、ただの飲み会のときもあるし、悩み相談会のようになることもあるし、ちょっとめんどくさいときもあるしで、メンバーや流れによって楽しみ方も変わっていきます。

この日のゆんたくは飲み会というよりは僕の撮ったドローン動画を見ながらみんなで色々と話す友達の集まりのような感じで、僕がこれまで関わったゆんたくの中でもかなり楽しいものだったと今でも感じています。

一通り見終わって、ゆんたくも一段落したあと、ホタルを見に出かけました。

最近は月齢が満月近く、夜はずっと月明かりに照らされてとても明るくて、星もあまり見えません。

毎日見てて思ったのは、ホタルも明るいとどうやら光らないということで、星だけでなくホタルも見られない日が続いていました。

でも今夜は雲が多く月が隠れていて道はそこそこに暗く、期待して行ってみるとやはりホタルが光っていました。

この日は光りながら飛ぶホタルも見ることができて、むしろこれまでで一番キレイなホタルを見られた気がします。ドイツ人女性と時間を共有できる最後の晩に、一緒にキレイなホタルを見ることができてとても嬉しかったです。神様に感謝します。

そして、宿に戻って就寝です。